カーボンブラック協会

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カーボンブラックのナノマテリアルとしての安全性

4.カーボンブラック・煤の構造

図2 カーボンブラックの構造

 

 カーボンブラック構造の概念図と寸法を図2に示す。
 カーボンブラックの分解できない最小単位は、図2に示すアグリゲートである。尚、その一部分(ドメイン)を粒子と通称する。この粒子は、ナノマテリアルで最小単位として定義される粒子に該当して考えられるがあくまでもアグリゲートの一部である。ドメインの径及びアグリゲートの長さは、かなりコントロールすることができ、球形の物も製造可能である。アグリゲートを構成するのは、炭素6員環(黒鉛の成分と同じもの)及び炭素5員環で有る。表面には、水素官能基及び小量の酸素系官能基が有る。安定な炭素5及び6員環を基本構造とするカーボンブラックは、化学的に安定で毒性も低い。アグリゲートは、ファン・デルワ―ルス力等の物理的な力により2次凝集体(アグロメレート)を構成する。
ナノ単位の粒子は、相互が近接するため、結合強度は強く、一般の状況では2次凝集体を完全にバラバラにすることは難しい。


 カーボンブラックの製品は、飛散防止のため1mm程度のビードという形で、輸送販売されることが殆どである。カーボンブラックの電顕写真を図3・4・5に示す。電子顕微鏡には、対象物に電子線をあて透かして(内部を)観察する透過型電顕(以下TEM)と対象物に電子線をあて表面を観察する走査型電顕(以下SEM)がある。ここでは、両手法を並べて記載する。(図4は、TEMのみ記載)

 図3はファーネス法で作られたゴム用カーボンブラックを記載する。ゴム用カーボンブラックは、多くの品種が有るが、ここでは大粒子径であるファインサーマル級(算術平均粒子径85nm)、古くから使用されていたGPF(General Purpose Furnace)級(算術平均粒子径59nm)、カーボンブラックの品種の中で使用量が最も多
いHAF(High Abrasion Furnace) (算術平均粒子径31nm)を代表例とし掲載した。(注 新日化カーボン㈱ 製 記載HTC・ニテロンは商標 粒子径は同社測定)

 図4はファーネス法で作られたカラー用カーボンブラックを記載する。MCF(Medium Color Furnace)及びHCF(High Color Furnace)の代表製品を掲載した。(注 三菱化学㈱写真提供)
又、図5はアセチレン法で作られた導電用カーボンブラックを掲載する。ここでは一般品(算術平均粒子径 35nm)、低比表面積品HS-100(算術平均粒子径48nm)、高比表面積品FX-35(算術平均粒子径23nm)、を掲載した。 (注 電気化学㈱製 記載は商標 粒子径は同社測定)
図3の写真2のファインサーマル級カーボンはボールの様に球状のものがほとんどであり、つながって見えるのは、観察膜の厚み方向に有る観察物が重なって見えるだけである。他の写真は、全てアグリゲート構造に成っている。どの写真でもドメイン(粒子)の平均径は、10~100nmの領域に含まれている(スケールは各写真に掲載)。

 SEM写真は、詳細な粒子径を測定するのには適さないが、ドメイン(粒子)の部分が丸く見えるので大まかな分類をすることは可能である。このSEM写真で墨の原料とし昔から使用されてきた松煙煤・油煙煤を観察し図6に示す。(注 ㈱墨運堂製 粒子径は同社測定)。油煙煤は、カーボンブラックのHAF級カーボンブラックに近い粒子径を持つことが解る。松煙煤は、ファーネス法と比較すると広い粒子径分布を持つことが特徴と成っている。小さな粒子径のものは20nmのものもある。このように詳細な構造を見ても従来から使用されてきた松煙煤・油煙煤と現代の煤であるカーボンブラックは、粒子径及び構造の差異が少なく、ともにナノマテリアルに分類される構造であることが分かった。*注
*注 カーボンブラックは、現代の工業技術を駆使して作られているため、大きさは煤と同等であるが、
表面に付着している有害成分の割合は、より少ない。

 

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