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カーボンブラックのナノマテリアルとしての安全性

5.電子顕微鏡で見た古代墨・現代墨の煤とカーボンブラック

 墨は、煤10に対し膠(にかわ)6と香料(全体の0.3~0.6%)を混練し、型に入れてプレスし成形して乾燥させたものである。個々の工程には、細心な配慮がなされており、詳細は参考文献*7を参照されたい。
図7に示した、走査型電子顕微鏡(以下SEMと記す)データに示した評価試料は以下のものである。
注)下記(1A・2B・・・)は写真番号を示す。
1A:下総国分僧寺出土土器(8世紀後半) 倍率20,000倍 縮尺0~1μm参照
2B:Aに現在の松煙墨塗ったもの 倍率20,000倍 縮尺0~1μm参照
注:松煙墨は松煙煤を原料とした墨
3C:Aに現在の油煙墨塗ったもの 倍率20,000倍 縮尺0~1μm参照
注:油煙墨は油煙煤を原料とした墨倍率
4D:下総国分僧寺出土土器の墨痕(8世紀後半)倍率20,000倍 縮尺0~1μm参照
5E:同出土の墨書土器(土師器:8世紀代)倍率20,000倍 縮尺0~1μm参照
6F:平城京左京三条一坊十四坪出土の墨 倍率20,000倍 縮尺0~1μm参照
7G:平城京右京五条四坊三坪出土の墨 倍率20,000倍 縮尺0~1μm参照
8F:平城京左京三条一坊十四坪出土の墨 拡大写真 倍率50,000倍 縮尺0~0.5μm参照
9G:平城京右京五条四坊三坪出土の墨 拡大写真 倍率50,000倍 縮尺0~0.5μm参照
 表記の試料観察は、日本電子JSM5410LVを使用した。
 既に記載したようにOECDの定義では、ドメインの径が1~100nm(10%以上含まれることが必要)に含まれれば構造体全体の大きさに係わらずナノマテリアルとして分類される。従って、写真の丸い凸の径によりナノマテリアルか否かの判定を行うことができる。山路は,写真よりFは100~150nm前後の粒子径のものが多く、Gは10~100nm前後の粒子径のものが多いとしている。Fでも100nm以下の粒子径のものも見られ、OECD定義では両方の古代墨共にナノマテリアルに含まれる可能性は大きい。
 煤・カーボンブラックの黒色は、粒子径が小さく、粒子径分布がシャープなほど色が黒くなる。又、粒子径の大小により底色(青っぽい黒か、赤っぽい黒か)は決まる。一般に小粒子径では赤っぽく見える。現在の油煙煤は、粒子径が小さく、均一化し黒色度を増加しているように見える。一方では、昔ながらの松煙煤が独特な色調から好まれ、現在でも使用されている。このことは、先人が1000年以上延々と煤を使用して、改善を図ってきたことを伺わせるものである。 墨用の煤及び墨は、このように古くからの技術を伝承しながらも創意工夫が図られている。安全性についても 配慮がなされていると考えている。
尚、山路等は、古代の墨の透過型顕微鏡写真の観察も計画しており、古代の煤の実態がより明らかになると考えられる。

図7 古代墨用煤の粒子(SEM写真)

 

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